トゲナシノイバラのPodcast
下記のPodcastは、Geminiで作成しました。
はじめに
バラはお庭やベランダを華やかに彩ってくれる人気の植物ですが、多くの品種には鋭いトゲがあり、お手入れの際に手を怪我してしまったり、服を引っかけてしまったりするのが悩みの種になりがちです。しかし、日本の野山に自生する野生のバラ「ノイバラ」の仲間には、トゲがほとんどない「トゲナシノイバラ」という特別な品種が存在します。
トゲナシノイバラは、触っても痛くないしなやかな枝を持ち、春には可愛らしい白い小花をたくさん咲かせ、秋には真っ赤な実を実らせるという、日本の四季に調和した素朴な美しさが魅力です。非常に丈夫で病気や害虫にも強いため、特別なテクニックを持たないガーデニング初心者や、小さなお子様、ペットがいるご家庭でも安心して育てることができます。
この記事では、トゲナシノイバラの基本情報や、その繊細で美しい姿、初心者にも分かりやすい丁寧な育て方のコツから、古くから愛されてきた歴史や現代での実用的な利用法までを詳しくご紹介します。この記事を通じて、トゲナシノイバラの優しく奥深い世界に触れてみませんか?
トゲナシノイバラの基本情報
トゲナシノイバラは、日本全国に広く自生しているノイバラの変種、あるいはトゲがない個体を選び出して増やした「選抜種」です。日本の厳しい気候(夏の暑さや冬の寒さ)に完全に適応しているため、外来の園芸品種のバラと比べて非常に強健(きょうけん:病気や環境の変化に強く丈夫なこと)で、手がかからないのが大きな魅力です。
まずは、トゲナシノイバラを深く知るための基本的な情報を表にまとめました。
【トゲナシノイバラの基本情報】
| 写真 | ![]() |
| 学名 | Rosa multiflora Thunb. (またはトゲなし品種を指す Rosa multiflora f. inermis) |
| 科 | バラ科 (Rosaceae) |
| 属名 | バラ属 (Rosa) |
| 英名 | Multiflora rose, Baby rose, Rambler rose, Japanese rose |
| 原産地 | 日本、朝鮮半島、中国 |
| 植物分類 | 耐寒性落葉低木 |
| 開花期 | 5月〜6月頃(栽培環境によっては4月〜8月頃まで咲くこともあります) |
| 花色 | 白色(咲き始めのつぼみはほんのりピンク色を帯びます) |
| 別名 | ノバラ(野薔薇)、野茨(ノイバラ)、ロサ・ムルティフローラ |
| 花言葉 | 上品な美しさ、純朴な愛、素朴な愛らしさ、才能、詩、孤独 |
| 誕生花の月日 | 5月30日(花)、11月8日(実) |
トゲナシノイバラの画像
下記は、Geminiで描いた画像です。



主な種類
トゲナシノイバラおよびそれに関連する野生のバラは、その生育の仕方や葉の特徴などによって、いくつかのタイプに分類されます。
- タイプA:トゲナシノイバラ(一般的な白色小輪種) ノイバラ特有 of 鋭いトゲが自然界での突然変異などによって退化し、ほとんどなくなった品種です。しなやかで扱いやすい緑色の細い枝を伸ばし、5月頃に小さな白い花をブーケのように密集させて咲かせます。園芸業界では、市販されている多くの美しいバラの苗を作るための「台木(だいぎ:接ぎ木の土台として使われる強い根を持つ植物)」として密かに活躍しています。
- タイプB:トゲナシテリハノイバラ 主に海岸近くの岩場や砂地に自生する「テリハノイバラ(照葉野茨:葉の表面に強い光沢がある野生のバラ)」のトゲなし品種です。トゲナシノイバラに比べて開花期が1ヶ月ほど遅い6月頃になり、ツヤツヤとした美しい常緑に近い葉と、ミツバチをたくさん引き寄せるほどの非常に甘く爽やかな香りが特徴です。
- タイプC:一般的なノイバラ(野生の有棘種) 日本の野原や道端、河川敷などに広く自生している本来の野生種です。非常に強い生命力を持ちますが、枝には下向きに湾曲した鋭いトゲがびっしりと生えており、周囲の草木に引っかかるようにして這い登るように成長します。うっかり触ると手を切ってしまうため、家庭で安全に育てる場合はトゲのないトゲナシノイバラ(タイプA)が圧倒的におすすめです。
トゲナシノイバラの形態描写:その多様な美しさ
トゲナシノイバラは、華やかな大輪の園芸バラのような豪華さはありませんが、日本の風土に優しく溶け込む、素朴で洗練された美しさを持っています。
花の構造と色彩
トゲナシノイバラの花は、直径が約2〜3cmと非常に小ぶりで可憐なサイズです。5枚の花びらが丸く平らに開く「一重平咲き(いちえひらざき:花びらが重ならずに1重に開く形)」をしており、その中心には鮮やかな黄色をした「雄しべ(ゆうしべ:花粉を作る部分)」が多数集まり、清楚な白と黄色のコントラストを際立たせています。
この花は、1輪ずつポツポツと咲くのではなく、新しく伸びた枝の先端にたくさんのつぼみが集まり、まるで小さな花束のようになる「房咲き(ふさざき)」という性質を持っています。そのため、最盛期には株全体が白い雪に覆われたかのような見事な満開の姿を見せてくれます。
つぼみは開く前、ほんのりと優しいピンク色(淡紅色)に染まっており、花が開くにつれて純白へと変化していくため、咲き進む過程で美しい色彩のグラデーションを楽しむことができます。さらに、花からは香水の原料にも利用されるほどの、とても上品で心安らぐ甘い香りが周囲に漂います。
【トゲナシノイバラの花と実の可憐な姿】

葉の多様性と質感
葉は、バラ科の植物によく見られる「奇数羽状複葉(きすううじょうふくよう)」という独特の構造をしています。これは、1本の葉の軸(じく)に対して、左右対称に小さな葉(小葉:しょうよう)が数対並び、その先端に1枚の葉がつくことで、全体として鳥の羽のような形に見える構造を指します。トゲナシノイバラの場合、通常3〜4対の小葉(軸全体で7〜9枚の小さな葉)が集まっています。
1枚ずつの小さな葉は長さ約2〜5cmの長楕円形(だえんけい)で、葉の縁には「鋸歯(きょし:ノコギリの刃のような細かなギザギザ)」が規則正しく並んでいます。葉の表面にはツヤがなくマットな質感ですが、裏面には細かな短い毛が生えており、柔らかく落ち着いた緑色を呈します。
また、葉の付け根(葉軸の根元)には「托葉(たくよう:葉の土台にある小さな葉のような部分)」があり、これがクシの歯のように細かく深く裂けて、茎にぴったりとくっついているのがノイバラの仲間を見分ける大きな特徴です。端的に言って、これらを支えるしなやかな枝(シュート:根元から勢いよく伸びる新しい太い枝)には、怪我の原因となるトゲがほとんど見られず、滑らかな緑色の木肌を堪能することができます。
トゲナシノイバラの生態・生育サイクル
トゲナシノイバラを上手に育て、毎年たくさんの花や実を咲かせるためには、その生態と年間を通じた育成スケジュールをしっかりと把握することが重要です。
適切な環境と育て方
- 日照(にっしょう:日光の当たり具合) トゲナシノイバラは、日光がたっぷり当たる明るい場所を好みます。一年を通して日当たりの良い屋外で育てることで、枝が健康に太くなり、花芽(はなめ:花の赤ちゃん)がたくさん作られます。ただし、真夏の西日(にしび:夕方の極めて強い日差し)が当たり続けると、葉の組織が熱で破壊されて茶色く枯れる「葉焼け(はやけ)」を起こすことがあるため、夏の暑い時期だけは西日を避けられる涼しい風通しの良い半日陰(はんひかげ:午前中だけ日が当たるような場所)に置いてあげましょう。
- 水やり 野生種であるノイバラの仲間は、生育期に非常にたくさんの水分を必要とします。基本は「土の表面が白っぽく乾いたら、鉢底の穴からお水が流れ出るくらいたっぷりと与える」ことです。特に、新芽が勢いよく伸びる春から5月の開花期、そして夏場は水切れ(水不足によるしおれ)を起こしやすいため、朝の涼しい時間帯に毎日観察して水やりを行います。冬の休眠期(植物が活動を休めて眠っている冬の間)は、それほど水を吸わなくなるため、土が完全に乾いた数日後の暖かい日中に、土を軽く湿らせる程度で十分です。
- 土 もともと野原のあらゆる土壌に自生している野生種なので、土質はそれほど選びません。しかし、根が常に水浸しになって腐ってしまう「根腐れ(ねぐされ)」を防ぐために、水はけ(排水性)が良く、同時に適度な湿り気を保てる「水持ち(保水性)」の良い土を好みます。市販の「バラ専用の培養土(ばいようど)」や、一般的な「草花用の培養土」で十分に元気に育ちます。自分で混ぜる場合は、赤玉土(中粒または小粒)をベースに、保水性と栄養を補う腐葉土(ふようど)やピートモスを「6:3:1」の割合でブレンドすると良いでしょう。
- 肥料 トゲナシノイバラは非常に生命力が旺盛なため、肥料の与えすぎには注意が必要です。栄養が多すぎると、枝葉ばかりが生い茂って花が咲かなくなったり、病気に弱くなったりします。肥料を与える時期は、新芽が動き出す前の「1月〜2月頃(寒肥:かんごえ)」、花が咲き終わった後の「6月頃(お礼肥:おれいごえ)」、そして実が成熟し始める「10月頃」の年に3回、ゆっくりと長く効く緩効性(かんこうせい)の化成肥料や、馬糞(ばふん)・鶏糞(けいふん)などの有機性肥料を株元に少量施すのがベストです。
- 温度 寒さには極めて強く、日本全国(北海道南部まで)の屋外でそのまま冬を越すことができます。特別な冬越し対策は不要ですが、夏の日本の「高温多湿」はやや苦手とするため、風通しの良い涼しい環境を作ってあげることが夏を元気に乗り切る秘訣です。
季節ごとの管理
- 春(3月〜5月):新芽の展開と美しい開花 気温の上昇とともに、新しい若葉がぐんぐんと伸び始めます。この時期は最も水分を必要とするため、水やりを怠らないようにします。5月上旬〜中旬には待望の満開の花を咲かせ、お庭いっぱいに爽やかな香りを届けてくれます。
- 夏(6月〜8月):病害虫対策と暑さの克服 花が終わった後は、小さな緑色の実が少しずつ膨らみ始めます。この時期は「ハダニ(葉の裏に寄生して栄養を吸い取り、葉を白く枯らしてしまう非常に小さな虫)」が発生しやすいため、夕方に葉の表裏へ霧吹きで水をかける「葉水(はみず)」を行い予防します。また、おがくずのような粉が株元に落ちている場合は、「カミキリムシの幼虫」が幹の中に入り込んで食い荒らしている証拠なので、おがくずの出る穴を探して針金を差し込むか、殺虫剤を注入して駆除します。
- 秋(9月〜11月):たわわに実る真っ赤な果実 春に咲いた花の数だけ、実が次第に鮮やかな真っ赤に熟し、お庭を美しく彩ります。気温の低下とともに葉は黄色く色づき(黄葉:こうよう)、徐々に落葉の準備を始めます。
- 冬(12月〜2月):剪定と植え替えの絶好のタイミング トゲナシノイバラが完全に葉を落として成長を止める「休眠期(きゅうめんき)」に入ります。この静かな時期に、翌春に向けた大切な手入れを行います。
- 剪定(せんてい:不要な枝を切り落として形を整えること): 12月〜2月頃、日当たりと風通しを良くするために、枯れた枝や細く弱々しい枝、混み合って交差している枝を根元からすっきりと切り落とします。根元から勢いよく生えてくる太い新しい枝(シュート)に翌春の花がよく咲くため、古い枝を切り落として新しいシュートを残し、株を若返らせるように剪定するのがコツです。
- 植え替え(うえかえ): 鉢植えの場合、根の生長が早いため、1〜2年に1度の頻度で植え替えを行います。根を傷めない休眠期(1月〜2月頃)に鉢からそっと抜き出し、古い土を軽く落として一回りか二回り大きな鉢に新しい土で植え直します。
【トゲナシノイバラの年間生育サイクルと作業スケジュール】

繁殖方法
トゲナシノイバラをお家でさらに増やしたい場合は、いくつかの簡単な方法があります。
- 挿し木(さしき:枝の一部を切り取って土に挿し、新しい株を作る方法) 最も簡単で、初心者にも非常におすすめの繁殖方法です。6月頃、または秋の10月頃に、その年に伸びた健康なしなやかな枝を約15cmの長さに切り取り(挿し穂:さしほ)、切り口を斜めにカットして数時間水に浸けてしっかりと水分を吸わせます。その後、「赤玉土(小粒)」などの清潔な土に挿し、直射日光の当たらない明るい日陰で、土を乾かさないように水やりを続けて管理すると、約1ヶ月ほどで切り口の節から新しい白い根が生えてきます。十分に根が張ったら、小さな鉢にバラ用の土で植え替えて大きく育てていきます。
- 葉挿し(はざし:葉を土に挿して増やす方法) 多肉植物や一部の観葉植物でよく行われる繁殖方法ですが、トゲナシノイバラを含むバラの仲間では、葉だけを土に挿しても芽が出たり根が成長したりすることはありません。バラを増やす際は、葉単体ではなく、必ず「芽(節:ふし)」を含んだ枝を使用する「挿し木」を行うようにしてください。
- 種まき(たねまき) 秋に十分に真っ赤に熟した実を収穫し、その中から種を取り出します。ノイバラの種には「発芽抑制物質(はつがよくせいぶっしつ:芽が出るのを抑える自然の成分)」が果肉に含まれているため、種を果肉からきれいに取り出し、水でしっかりと洗うことが重要です。水に一週間ほど浸けて、毎日お水を取り替えながら未熟な軽い種(水に浮くもの)を取り除いた後、翌年の2月〜3月頃に鉢に蒔いて、土が乾かないように管理すると、春の訪れとともに可愛い双葉が芽吹きます。
- 株分け(かぶわけ:植物の根元を切り分けて複数の株にする方法) トゲナシノイバラは基本的には1つの太い根元から茂る低木であるため、一般的な草花のように簡単に手で株を引き裂いて株分けすることはできません。しかし、根元から新しいシュートが地面の下から自前の根を伴って伸びている(ひこばえ)場合は、冬の植え替え時にその部分を鋭利な刃物で根を付けたまま切り離し、独立した株として別の鉢に植え付ける「株分け」が可能です。
【初心者向け!トゲナシノイバラの挿し木手順】

トゲナシノイバラの花言葉・文化・歴史
トゲナシノイバラは、日本に古くから自生してきた野生バラであるため、その素朴な美しさと高い生命力は、何世紀にもわたり文学や歴史、人々の想いと深く結びついてきました。
花言葉とその意味
トゲナシノイバラ(ノイバラ)には、その自然体で優しい美しさを映し出すような、素敵な花言葉がたくさん与えられています。
- 代表的な花言葉:「上品な美しさ」「純朴な愛」「素朴な愛らしさ」 これらは、きらびやかで派手な西洋の園芸バラとは一線を画す、一重の小さく白い花を静かに優しく咲かせる、ノイバラの可憐で控えめな花姿そのものから名付けられました。
- 文化的な由来の花言葉:「才能」「詩」 ドイツの偉大な詩人ゲーテが書いた有名な詩「野ばら(Heidenröslein)」に、シューベルトなど多くの著名な作曲家が曲をつけ、世界中で美しく歌い継がれてきたという芸術的背景から、この花言葉が生まれました。
- 対比的な花言葉:「孤独」 本来のノイバラが持つ「鋭いトゲ」が、他者を寄せ付けず、荒野でひっそりと群生している厳しい様子からつけられました。しかし、私たちが育てるトゲナシノイバラには触っても痛いトゲがほとんどないため、むしろ「人懐っこく、誰でも安心して触れ合える愛嬌」を感じさせてくれます。
- 色別の花言葉: 一般的なバラ全体の花言葉として、赤色は「情熱」「愛情」、ピンク色は「上品」「しとやか」、黄色は「友情」「平和」、そしてトゲナシノイバラのメインカラーである白色には「純潔」「深い尊敬」という意味があります。トゲナシノイバラのつぼみが開く際、ほんのりとしたピンク色から純白へと移り変わる様子は、まさに「純朴な愛」から「上品な美しさ」への成長を象徴しているかのようです。
誕生花としてのトゲナシノイバラ
トゲナシノイバラ(野茨)は、初夏の美しい開花期を象徴する5月30日(野茨の花)と、秋に実が豊かに熟す11月8日(野茨の実)の誕生花とされています。
身近な人への贈り物として、「素朴な愛らしさ」という温かいメッセージを添えてトゲナシノイバラの鉢植えや切り花をプレゼントするのも大変おしゃれです。トゲがないトゲナシノイバラなら、受け取った相手が痛い思いをする心配が全くないため、思いやりの伝わる優しいフラワーギフトになります。
文化・歴史的背景
- 発見と命名の由来: 有棘のバラ全体を古代の人々は「茨(いばら:棘のある低木の総称)」と呼び、野原に自生していることから「野茨(ノイバラ)」となりました。その中にごくまれにトゲが退化した個体が自然界に存在し、それを園芸家たちが発見し、挿し木などで大切に守り増やしてきたものが、現代の「トゲナシノイバラ(棘無し野茨)」です。
- 『万葉集』と防人の歌: 日本の歴史におけるノイバラの登場は古く、奈良時代の日本最古の歌集である『万葉集』に、「うまら(うばらの東国方言)」という名前で2首の歌が記録されています。 その中の一首は、生まれ故郷を遠く離れて過酷な防衛任務に向かう防人(さきもり)が、残していく最愛の妻への引き裂かれるような想いを詠んだ名歌です。「道端のノイバラの枝先に這いつくばる野生の豆のように、私を引き止めようと悲しんでからみついてくるあなたを、私は置いて別れて行かなければならないのだろうか」と詠まれています。鋭いトゲがあり人々から敬遠されがちだった野生のノイバラですが、そのしなやかなつるの生命力は、当時の人々の切ない心情に寄り添う、身近な大自然の象徴でした。
- 世界のバラの歴史を変えた「房咲き性」: 現代の私たちが街で見かける華やかな西洋のバラ(モダンローズなど)のルーツをたどると、実はこの日本の素朴な「ノイバラ(学名:ロサ・ムルティフローラ)」に突き当たります。 昔のヨーロッパのバラは、1本の枝に大きな花が1輪だけ、春に一度しか咲かないものが主流でした。しかし、18世紀以降に日本のノイバラが海を渡り、その「1本の枝に数え切れないほどの花を咲かせる卓越した房咲き性(多花性)」が品種改良の交配に親として使われたことで、現代のような、春から秋まで途切れなく豪華にたくさんの花を咲かせ続ける四季咲きバラの数々が誕生することになりました。トゲナシノイバラは、世界中の美しいバラたちの「偉大なご先祖様」であり、バラの歴史を大きく進化させた立役者なのです。
トゲナシノイバラの利用法
トゲナシノイバラは、単に庭に植えて花を眺めるだけでなく、私たちのアイデア次第で、暮らしのあらゆるシーンに彩りを与えてくれる非常に実用的で素晴らしいポテンシャルを秘めています。
ガーデニングと室内装飾
- 花壇・寄せ植え: トゲナシノイバラは、非常に丈夫で土質を問わないため、花壇の背景として他の低木や草花と一緒に地植え(じうえ:地面に直接植えること)するのに最適です。また、トゲがなくしなやかなので、大きめのテラコッタ鉢などを使った寄せ植えの主役としても周囲の植物を邪魔せず美しく馴染みます。
- 吊り鉢(ハンギングバスケット): 枝が柔らかく下に垂れ下がる性質を活かして、高い位置から鉢を吊るす「吊り鉢」仕立てにするのもとてもおしゃれです。春には真っ白な花がシャワーのように咲きこぼれ、秋には赤い実がシャンデリアのように枝垂れる姿を楽しむことができます。
- 室内鉢植え: 基本的に屋外を好む植物ですが、日当たりの良い南側の窓際などであれば、室内の鉢植えとしても十分に管理することができます。お部屋の中に、野生バラならではのナチュラルで上品な空気感を取り入れることができます。
- テラリウムやミニ盆栽、苔玉: トゲナシノイバラは、樹勢を制限して育てる「ミニ盆栽(盆栽)」や、根元を苔で丸く包む「苔玉(こけだま)」の素材としても非常に人気があります。ガラス容器の中に小さな自然の世界を作る「テラリウム」に小さな挿し木苗を導入するのも面白く、剪定によってコンパクトなサイズを維持しながら、四季折々の変化を机の上で贅沢に楽しむことができます。
エディブルフラワーとしての可能性
- 食用としての利用例: 化学農薬や殺虫剤を一切使用せずに安全に育てられたトゲナシノイバラの白い花びらは、サラダのトッピングや、ケーキ・デザートのデコレーションに使える「エディブルフラワー(食べられるお花)」としてお皿を華やかに彩ることができます。
- 注意点: 食用のために花を摘む場合は、朝の早い時間帯(太陽が昇って水分が蒸散する前)に行うと、お花のみずみずしさと甘い香りを最も高い状態でキープできます。また、当然ながら市販の苗には栽培過程で農薬が使用されている場合があるため、食用として利用する場合は、必ず自身の手で完全無農薬かつ無肥料などの安全な環境で育てた株から収穫するようにしてください。
薬用・伝統的利用
- 民間療法や伝統的な使い方: 日本の伝統医療や漢方の世界において、ノイバラの成熟しかけた(少し青みが残る)果実を天日で乾燥させたものは、古くから「営実(えいじつ)」という生薬(しょうやく:自然の恵みを利用したお薬の原料)として重宝されてきました。 『大同類聚方』や『本朝医談』などの歴史的な医書にもその効果が記録されており、主に「体の中の余分な水分を排出する強力な利尿薬」や、頑固な便秘を解消するための「瀉下薬(しゃげやく:お通じを良くする強い下剤)」として利用されてきました。さらに、実を煎じた液は消炎作用(痛みを鎮め、腫れを引かせる効果)に優れているため、ニキビや湿疹、おできなどの「腫れ物」の患部を洗うための民間療法の外用薬としても使われてきました。近年では、この実から抽出されるエキスの高いアンチエイジングや美白効果が科学的に実証され、多くの高級化粧品の有効成分としても広く活用されています。
- 現代医学的な強い注意点: 営実の実には、腸を強力に刺激する活性成分「ムルチフロリンA」などが豊富に含まれており、これは現代医学において「峻下薬(しゅんげやく:効果が極めて激しく出る強い下剤)」に分類されます。 ハーブティーとして知られる西洋のローズヒップと同じ感覚で、お庭で収穫したトゲナシノイバラの実を安易にたくさん煎じて飲むと、使用量をほんの少し誤っただけでも、激しい腹痛や重度の下痢、嘔吐などを引き起こすことがあり大変危険です。そのため、現代の民間療法では、家庭での実の内服は絶対に避けるべきだと強く注意喚起されています。お庭で収穫した美しい赤い実は、口に入れず、あくまでリースや切り花などの「見て楽しむ鑑賞用」として安全に愛でるようにしてください。
【トゲナシノイバラの美しいミニ盆栽仕立て】

まとめ: 尽きない魅力
この記事では、トゲがなくて安心してお手入れができる日本の野生バラ「トゲナシノイバラ」について、その魅力あふれる基本情報、初心者にも優しい育て方のコツ、大いに愛された歴史や現代における多様な楽しみ方をご紹介しました。
トゲナシノイバラは、豪華に咲き誇る園芸品種のバラのような派手さはありませんが、清楚で愛らしい真っ白な一重の小花、お部屋を満たす優しい香り、そして秋を赤く彩るたわわな美しい果実と、四季の移ろいを私たちの暮らしに最も身近に届けてくれるかけがえのない植物です。
そして、何よりも作業を邪魔する「痛いトゲ」がほとんどないからこそ、毎日のお水やりや、冬のハサミを入れる剪定、植え替えといったお手入れの一つひとつを、怪我を恐れることなく楽しく安心して行うことができます。
野生種ならではの並外れた強健さと、手がかからない優しさを併せ持つトゲナシノイバラ。ぜひ、あなたのお家やベランダにもこの愛らしい野生のミニバラを迎え入れて、植物と暮らす毎日をもっと安心で、心豊かなものにしてみませんか?
参考資料
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- 加薬草園「漢方・薬草:営実(えいじつ)」、https://kayaku.jp/2904
- 生活110番「ノイバラの剪定時期とやり方」、https://www.seikatsu110.jp/library/garden/gd_prune/135065/
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- みんなの趣味の園芸「ノイバラそだレポ:新芽と葉の成長」、https://www.shuminoengei.jp/?m=pc&a=page_r_detail&target_report_id=20074
- あげたけ「飾る際のノイバラの実と花言葉」、https://agetake.co.jp/eda2409/
- 盆栽みよ「バラ盆栽の育て方:植替え(秋、芽出し前2月上旬)」、https://bonsai.shinto-kimiko.com/sodatekata/mimono/bara.htm
- バラ園芸sora「3ヶ月で作るノイバラ台木 秋の挿し木」、https://rose-sora.blogspot.com/2014/12/blog-post.html
- ピーキャットローズショップ「バラの種まき・台木の育て方手順」、https://bara.shop/bara-yuukisaibai/bara-naedukuri/bara-tanemaki/
- 野生和草事典「ノバラ・ノイバラ:営実」、https://yasouensearch.jp/flower_name/%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%A9/
- YouTube「野生のバラ、ロサ・ムルティフローラと品種改良の歴史」、https://www.youtube.com/watch?v=Kvdifnxa_vk
- リゾートエステート「ノイバラ(野茨)の名前の由来とトゲ」、https://resort-estate.com/info/42979/
- 身近な薬用植物「防人の歌に詠まれた『ウマラ(ウバラ)』」、https://wild-medplants.jp/topics_&_items2/manyo-noibara.htm
- 東北大学薬草園「生薬標本:エイジツ(営実)」、https://www.pharm.tohoku.ac.jp/~yakusoen/contents/observation/hyouhon-ku/eijitsu/
- エーザイ 薬用植物薬草図鑑「ノイバラの花と実、大同類聚方の歴史」、https://www.eisai.co.jp/museum/herb/familiar/polyantha.html
- ウチダ和漢薬「生薬の玉手箱:『営実(えいじつ)』」、https://www.uchidawakanyaku.co.jp/kampo/tamatebako/shoyaku.html?page=061
- 東京生薬協会「新常用和漢薬集:エイジツ」、https://www.tokyo-shoyaku.com/ohana.php?hana=657


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